2018/02/14

起床したら朝、のはずだった。

しかしすでに陽は高く、手元にあった目覚まし時計を壁に思いきり叩きつけた。

夫がこちらに近づいてきて、まあ落ち着いてください、と言うから、とりあえず呼吸の乱れを整えることにした。

私は昼が嫌いだ。昼は怠け者の跋扈する時間だから。


しばらくすると夫は私を外に連れ出した。美味しいランチが食べられるところに行きましょう、とだけ言い、黙り込んで二人歩いた。しかしたどり着いた店は長期休暇をとっていた。苛立ちが隠しきれずVAPEの煙を思い切り夫の顔に吹きかけた。夫はくしゃっと顔を歪ませ、こちらを洗い流され続けているような美しい瞳でぢっ、と見た。


結局、近所の中華料理屋に行った入ることにした。私は中華丼とピリ辛ラーメン、夫は麻婆豆腐丼と塩ラーメンを注文した。寝起きはもうこの世の終わりのような感情に支配されていたが、食事をしたらわりと前向きな思考ができるようになってきた。会計を済ませ店を出たところで夫に、すまなかった、と伝えた。夫は、大丈夫ですよ、とだけ答えてこちらを向いてはくれなかった。


正直に述べると、私達の始まりをもう思い出せない。夫はまだ覚えているのだろうか。私達の終わりは近いのだろうか。この純粋の名を冠した汚物を纏う夫を、私はどうしてやりたいのだろう。何不自由ないガラス細工の姫として扱ってやりたい反面、愛する私を目の前で叩き壊して絶望の淵に叩き落としてやりたいとも思っている。


下を向いて私の三歩後ろを歩いている夫を抱き寄せてもう一度、すまなかった、とこぼした。大丈夫ですよ、と先ほどと同じ返事が返ってきた。


夫の腕の中で壊れることができたなら、それ以上の幸せはないと今は思っている。真実を映さなくなったこの瞳の片隅に、もう少しの間、君の影を残していたい。


私は昼が好きだ。君の顔がよく見えるから。