2017/06/20

仕事を終えた私は限界だった。普通に疲れた、とかではなく精神的にかなり追い詰められていた。

高所でディスプレイを組んでいる私の唯一の足場である脚立を揺らす子供。ようやくディスプレイを完成させてもパッとしない出来。上から目線のアルバイト応募者。クレーム対応。他店のクレームの代理対応。

ただ1つの救いは上司が優しいことだ。しかしもはや上司のフォローすら傷口にしみる。痛い。正直、この程度でけしからんというのも意見としてあると思うのだが、私がしんどいならそれはしんどいのだ。

タイムカードを切り、職場を出た。スマートフォンを確認すると、夫からLINEがきていた。美味しいお店があるそうなので食べに行きませんか、とのこと。地図が添付されていた。私が目的地にたどり着くと、夫はすでに到着していた。タイ料理の店だった。席に案内され、立ち仕事の私は少しだけ落ち着きを取り戻した。

クイッティアオとグリーンカレーを注文し、私達はポツポツと会話をした。仕事がしんどかったこと。仕事中、身体が震えて涙が出そうだったこと。背中がなんだか熱いこと。話しているうちに料理が届いた。その時私は泣いていた。

涙がしょっぱかったせいで、肝心の料理の味が分からなかった。唯一分かったのは、夫が頼んだグリーンカレーが馬鹿みたいに辛かったことだ。

店を出てシャッターの閉まり始めた商店街を歩いた。夫がぽつりと、無理はしないでくださいね。と言った。そして、また置いていかれそうになったら困ります。と続けた。

夫は月からきた。しかし迎えはこない。いつか来るのかもしれないが、今の所その予定はない。私はもう二度と、夫をこの星に置き去りにしようとはするまいと誓った。