2017/06/02

私は考え事をするのが好きだ。考え事をすると時間があっという間に過ぎていくから。私はよく考え事をして、脳髄に存在する電話交換手達をパニックに陥らせる。私の細胞達の些細なおしゃべりが、身体全体、コアである脳髄にすら影響を及ぼすのだ。楽しくないわけがない。

私の細胞達の些細なおしゃべりは、隣同士で行われているうちは何も問題がない。しかし額の細胞が太腿のおしゃべりに口を挟んだらもう駄目。なぜなら電話交換手を介して会話にまざりこんでいる訳だから、電話交換手の手を煩わせている。そうすると次は踵の細胞が、次は瞼の細胞が、次は右親指の細胞が……となって徐々に電話交換手達は手が回らなくなっていく。

現代では脳髄はモノを考える部位だと言われているが、私は脳髄が電話交換手であるという説を信じている。記憶は、思考は、すべて細胞のものだ。古くなった細胞は死に、細胞とともにその細胞が持っていた記憶も消滅する。

私はあまり話さない。人に不快な話題を振ってしまったら、なんて考えるだけで自殺しそうになる。私はよく話す。私の死にゆく細胞の記憶を新しい細胞に引き継ぐために。忘れないために。私は忘れるのが怖い。嬉しかったことも。悲しかったことも。そしてあなたのことも。